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【ドキドキの高校入学式】校内で迷子になって、イケメンな先輩に案内されてみた。

チューリップ
妄想

4月上旬。満開の桜は少しずつ花を散らせ、まるで新しい季節の訪れを歓迎する舞を披露してくれているみたい。桜も心も踊るこの季節は、不思議と新しい出会いに期待しちゃいますよね。今回は学生時代に経験したかった少女漫画のような妄想ストーリーを春の陽気とともにお届けしたいと思います。公園のベンチに座って読んで欲しいです。

「春、好きなんですか?」

pppp.ppppp.

「…うーんっ」

4月2日、月曜日。時刻は朝6時30分。目覚まし時計の音を聞いたのは、実に1ヶ月ぶりくらいだろうか。春休みの間は「自然と目が醒めるまで起きない」という自分ルールを決めていたためガラクタのように放置していた。久しぶりのアラーム音は、なんだか耳を強くひっぱられているような感覚に似ていて、慌てて止めた。

なかなか開いてくれない目をこすり、わずかに沸きあがった気力で体を起こす。窓を開けるとぱっと明るい世界が目の前に広がっていた。眩しさに思わず目がくらみ、光から視線をずらすと景色がぼやけて見えた。

今日からまた新しい日常が始まる。着慣れない制服と、今日のために買ったスクールバックを携えて外に飛び出す。いつだって何かを始めることは、少し怖い。こわばる顔を両手でグリグリほぐしてみても、またすぐにピンっと固まってしまうので自然に緩むのを待つことにした。

見慣れない道を自転車で思いっきり漕いで泳いでいると、大きな川沿いの道にでる。

「わあ…!」

岸辺に広がる桜の木と菜の花畑のコントラストに思わず声がこぼれた。自転車を放り投げ近くまで行くと、春らしい香りに包まれる。土と草と花と空と、全てが寄り添いあって絶妙な香りを醸し出していた。草のベットに寝転び、鼻歌を歌う。世界がゆっくり動いているような感覚に浸っていると、遠くから鐘の音が聞こえてきた。

_キーンコーンカーンコーン

「はっ!やばい!!学校!遅刻しちゃう!!!」

自分が入学式に向かってる途中だったことを、すっかり忘れかけていた。「恐るべし、春の陽気…」なんて呟きがら、どういう言い訳をしようかと考えながら全速力で自転車を漕ぐ。まさか入学式当日に遅刻するなんて…

学校の門をくぐる。もう校庭には人の姿は見えない。まだ定位置の決まっていない自転車を、駐輪場の空いてる場所に無理やり押し込み留める。あらためて校舎を見上げると、中学とは比べ物にならないほど大きく綺麗な建物だった。下駄箱に靴を入れ、内履きに足を入れる。

「さてと、体育館はどっちかな〜」

入学式だというのに、張り紙や案内が何もない。どうやら遅刻者には手厳しいらしい。野生の勘で右の方に歩いて行く。なんの根拠もないのに妙な自信が出てズンズン進んでいった。そしてたどり着いたのは古びた教室の並んだ廊下。どうやら旧校舎の方まで来てしまったらしい。我ながら方向音痴を拗らせていて笑える。

「あれ、もしかして迷子?」

背後から声をかけられて振り返ると、すらっと背の高い猫背気味の色白の男の人が立っていた。綺麗に整理整頓された顔立ちに思わず見とれていると、不思議そうに顔を近づけて来た。

「新入生だよね。入学式に遅刻ってなかなかやるなあ(笑)」

バカにされたのに嫌じゃない…むしろもっと欲しくなってる自分が怖い…。イケメンの効力、すごい…。

「春のせいです。」

ドキドキする心臓の音を誤魔化すように、咄嗟に言い訳をする。

「春のせいって…(笑)春がかわいそうだよ。」

困ったように眉をひそめて私を見る。

「春、好きなんですか?」

ドキドキが鳴り止まない。

「好きだよ、春が一番好き。」

そう言って彼は教室と反対側にある窓の外を眺める。

「…私もです。」

照れて赤くなった顔を気づかれないように、俯く。

「…って、こんなこと優雅に話してる場合じゃないでしょ(笑)体育館、案内するから入学式参加しい。」

方言交じりの彼の足元を見ると、靴に青色のマークが刺繍されていル事に気づいた。どうやらこの学校の三年生らしい。あと一年しか一緒にいられないのか…

「えー。今更行くの恥ずかしいからヤダ。学校内案内してよ、先輩♩」

素直に「はい。」て言えば可愛い後輩でいられるのに、どうせならもっと一緒にいたいというわがままが勝ってしまった。困ったように頭を掻きながら「どうすっかなあ…」と悩む先輩の耳元で「案内してくれたらお礼にお昼奢ります」と言うと、「隅々まで案内してやる」と、あっさり許可が出た。

食べ物で買われるとか先輩、案外ちょろくて可愛い。

「先生に見つかる前に早く行くよ」と言いながら白昼堂々、廊下で手を握る先輩。綺麗な指先は私の手をすっぽりと覆って振りほどけないほど強く握られていた。案内されたのは音楽室。一年生の頃、昼休みによく通っていたらしい。先輩の後について行くと奥に音楽準備室と書かれた小さな部屋があった。

「懐かしいなあ…。」と言いながら先輩は、アコースティックギターを手に持つ。音を優しく合わせると、ゆっくりと弾き始めた。「あ、この曲知ってる。」心地いい穏やかな音に目をつぶり、耳を傾け浸っていると「ふふっ。」と先輩が笑う声が聞こえた。目を開くといたずらっ子のような顔で「そんな油断してたら唇奪われちゃうよ?」とからかって来た。

冗談だとわかっているのに、心臓がうるさくって黙ってくれない。もう、限界だ….。私は覚悟を決めて声を出した。

「先輩….!!私、先輩のこと「そういえばさ、名前。まだ聞いてなかったよね。」

「あ、はい。私も知りません、先輩の名前。」

一世一代の勇気を、遮られたことで一気に恥ずかしさと後悔がこみ上げる。名前も知らない、初めてあった人に告白しようとしてたなんて…。先輩、途中まで聞こえてたよね。わざとかな、迷惑だったかな。

「名前、教えてくれる?」

頭を傾けて上目遣いで聞いてくる先輩。こんな時まであざといなんて。

「は、春です…。」

出会った時にした質問をどうか忘れていてくれと心の中で願う。先輩は少し驚いたように目を丸くした後、

「春か、いい名前だね。」
と言ってギターを置き、今度は大きな体ですっぽりと私の体を覆った。何が何だかわからず、思い切って尋ねてみる。

「春、好きなんですか?」

「好きだよ、春が一番好き。」

そう言って、先輩は頬に優しくキスを落とした。

新しい季節に素敵な出会いを期待して今日も外に出る

学生時代にこんな甘い出会いなんてなかったけど、きっと誰しもがどこかに素敵な人との出会いが待っていると信じているはず。そして今日も自分史上最高の「カワイイ」を求めて街に繰り出す。きっと今日くらいは、春の陽気心踊らせてみるのも悪くないかも。

ゆるみな。

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22歳。フリーランスのビアクリエイター/ライター・編集/グラビアアイドル。言葉とビールと料理とバスケと猫が好きです。生まれ故郷の秋田のフルーツでビールを造っ...

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