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3度目の夏の終わりと、線香花火の答え合わせ

線香花火
妄想

ふわりとカーテンが揺れ、生温い風が部屋に入りこんできたんです。夏が来る前は19時過ぎまで明るかった外の景色も、9月を目前にすると薄い闇に包まれるんですよ。少しずつ、終わりに近づいているんだなと感じました。

「平成最後の夏だから恋したい」と周りの友人たちは楽しそうで、次々に男の子のもとへと走って行ってしまいました。わたしはその背中を見つめながら、夏の恋は苦手だなあとため息をついたものです。

どうしてって? 夏の恋はすぐに散ってしまうでしょう。線香花火のように繊細で、だけれど強く煌めくのに、突然ポトリと落ちてしまう。恋はもともと儚いものですが——ああ、そうでしたね。恋は儚いものでした。夏のせいにしたいだけなのかもしれません。

 

昔と比べると、恋に積極的になれなくなったんです。何度も恋に落ち、何度も恋を終わらせて。そのたびに相手を傷つけ、わたしも傷つきました。

恋とは本来、そういうものです。相手を傷つけることを受け入れる覚悟と、自分が傷つく覚悟をもてなければ、恋なんてできやしません。どれほど好きで大切にしていても、別離か死別か、人との出会いには別れが来るのですから。

「想像力を育むには、恋をしろ」と誰かが言っていました。たしかに昔よりもやさしくなれたけれど、同時に臆病にもなった気がします。好きな人を自分が幸せにしたいという気持ちよりも、苦しめたくない、傷つけたくないという気持ちが勝ってしまうのは悪いことだと思いますか?

……なんてね。ただ、終わりが来るのが怖いだけだったんです。始まらなければ終わることもないですし。‘‘終わり’’を受け入れる覚悟は、あの頃のわたしにはなかったのでしょう。

 

薄い闇に包まれていく外の景色を見ながらそんなことを考えていたら、あなたから連絡が来ました。まだ覚えていますか? そうです、「線香花火、やらない?」って。

特別仲が良いわけではなかったけれど、夏の思い出にはなるだろうと思って二つ返事をしたんです。公園で待ち合わせて、無言で袋を開けて、火をつけて。線香花火だけをあんなにたくさん持ってくるとは思いませんでしたよ。

……ええ、集めたんですか。初めて聞きました、大変だったでしょう。わたしとたくさん線香花火をしたかった? ……そうですか、そうだったんですね。

繊細で強い光に照らされるあなたの嬉しそうな顔は、今でも忘れられません。どうしてわたしを誘ってくれたのか、その頃は知りませんでしたが、「ずっとこうして見ていたい」と思うほどやわらかくてあたたかい笑顔を見て、「線香花火をする相手がいなかったから適当にわたしを選んだのかな」とすこしだけ悲しくなったんですよ。

 

今年もたくさんありますね、線香花火。もうだいぶ暗くなってきましたし、やりましょうか。

もうすぐ、3度目の夏の終わりが来ますよ。

めくばせ

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東京でゆるゆると生きながら、ことばと生きている20歳。揺れるものと香水が好きで、小さな幸せを見つけることが得意。イケメンを見ると具合が悪くなるという特性があ...

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