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相合傘の中で、年下の‘‘絶滅危惧種’’に告白されてみた。

小枝
妄想

年下の‘‘絶滅危惧種’’に告白されるならば、相合傘の中で

桜の季節に雨が降ったら、今までの想いを伝えるチャンス

高身長黒髪爽やかイケメンを、‘‘絶滅危惧種’’と言ってもいい。

高身長・黒髪・爽やか・イケメン、と4つに分けて探せば、家から最寄り駅まで歩く間に1人くらいは見つけられるだろう。

けれど、その4つをすべて持ち合わせた男性はなかなかいない。金曜夜の新宿駅東口改札付近で人に揉まれながら辺りを見回してみても、まあ多分いない。仮にいるとするならば、きっと人の波から彼女を守っている。

 

「意外と大きいんだね」と言われることの多いわたしを軽々と見下ろす高身長、「一度染めたんだけど似合わなくって」と照れながら右手で触るやわらかそうな黒髪、毎日ミントをまるごと飲んでいるのかと思うほどに爽やかな笑顔。

わたしたちだって高身長黒髪爽やかイケメンの隣を歩いて、「これこそインスタ映えだ!」なんて言われてみたい! しかし、そんな機会は殆どない!

 

ということで今回は、イケメンを目の前にすると途端に具合が悪くなる筆者・めくばせが、‘‘絶滅危惧種’’である高身長黒髪爽やかイケメン(年下)に告白される妄想をしてみました。

自由も人生も奪われたい!相合傘に隠れた彼のホンネ

マイナス一度の雨が降る。桜の満開時期が近づいているというのに、ここ最近は天気が悪い。大学の図書館を出ると冷え切った空気が太ももの内側を撫でて、あまりの寒さに溜息すらも凍りそうだ。失敗した。こんなに寒いなんて聞いていない。

(明日のバイト、嫌だなあ。新商品が発売されたからすごく忙しくなるだろうし、入って2ヶ月になる新人の動きが遅くて回らないだろうし。)

なんて考えながらバッグに入ったパソコンをよけて、黄色の折り畳み傘を取り出そうとした、その時だった。

「あれ? 今帰りですか?」

背後から聞こえる、低くて甘い声。反射的に折り畳み傘をバッグの奥底に押し込み、くるりと回って彼を見上げる。

「相変わらずでかいね」

「第一声がそれですか」

皮肉っぽく、少しバカにしたように笑っては、「入ります? 持ってないでしょ」と言いたげな顔で傘を傾ける彼を、わたしは1年前から好きだ。

 

去年、軽音楽クラブの勧誘で校外を歩き回っていた時のこと。

そのルックスで一際目立つ彼は、他のサークルの餌食になっていた。こんな漫画みたいな図が他にあるか、が第一印象。あ―困ってるなあ、眉毛すっごく下がってる。全然笑ってないじゃん、頭掻いてるし。イヤならイヤって言いなさいよ……。
そう思うや否や、彼のもとへ走り出していた。「ちょっと借りるね!」と言って彼の右手を取り、桜の木の下の風を切るように進む。ふと後ろを振り返ると、まるで世界でも珍しい動物を見たかのような顔をしていて、なんて顔してんのよって思った覚えがある。

ただ、その時の彼の瞳が今でもずっと忘れられない。瞳の奥がグラグラと揺れて、同時にぴかぴかと光っていたのだ。伏せた瞳を縁取る睫毛が、とても長いことをその時に知った。きっとわたしはあの時にもう、彼を好きになっていた。

 

隣を歩く、180を優に超える彼の黒髪が、湿気のせいかいつも以上にカールしている。
瞬きをするたびにぱちぱちっと音が鳴りそうな長い睫毛に、くりっとした大きな瞳。華奢だけれど角張った手足に、決して健康的とは言えない白い肌によく似合う、モノトーンで統一されたコーディネート。某有名人気漫画の男子高校生にも引けを取らない、爽やかな笑顔。加えて、低くて甘い声。

いつなんどき、どこから見てもパーフェクト。
性格には少々難ありだが、それも含めて女性たちから絶大な人気を誇ることは言うまでもないし、お姉さま方が放っておくはずがない。

 

「この間、うちの学年の子に誘われたんだってね。おモテになりますなあ」

「大して興味のない人とデートするなんてイヤですよ。第一、俺好きな人いますし。先輩もイヤならイヤって言わなきゃダメですよ」

好きな人、というパワーワードに胸を抉られる。
当たり前か。自分を卑下するつもりはないし、彼の外側だけを見ているわけでもないけれど、やはりこれだけ素敵だと隣を歩くだけで切なくなってしまう。彼にも、彼の好きな人にも、申し訳ない。

雨だということを知っていたはずなのに買ったばかりの白いスニーカーを履いてきてしまった。
ポツポツと小さく降っていた雨はいつの間にか勢いを増していたが、スニーカーは殆ど濡れていない。

 

「それどういう意味よ……っていうか、ちゃんとイヤって言えるようになったんだね」

「先輩のおかげです。去年、サークルの勧誘で困っている時に先輩が助けてくれたじゃないですか。走りながらこっち向いて、‘‘イヤならイヤって言わなきゃダメよ’’って、笑いながら」

あはは、と懐かしむように笑いながら、まるで恋人を見つめる時のような彼の瞳に胸が高鳴る。
まって、こんな顔する人だった?こんな顔、なんとも思っていない人に向ける?

笑いかけられただけで元気を取り戻してしまう自分が憎い。さっきまで少し落ち込んでいた自分はどこへ行ったのだろう。

でも神様、どうか、今日のところは見逃してください。
もうバイトが嫌だなんて思いませんから。困っている新人には優しく教えますから。今まで以上に笑顔を絶やさず働きますから。これからは天気予報をきちんと見て、「こんなに寒いなんて聞いてない」なんて誰かのせいにしたりはしませんから。
だから今日だけは、もう少しこのまま、幸せでいさせてください。

 

「ええ、わたしそんなこと言ったっけ?」

「……言ってましたよ。俺、イヤってほんとに言えない人間だったんですよ、今まで。去年のあの日、見たことない女の人にすごい力で引っ張られて、走るしかなくて、でも全然嫌じゃなかったんです。桜のなかで先輩の笑顔見た時に、この人に人生変えられちゃうかもって思ったんですよね」

神様、わたし、彼が好きです。
彼の温かくて大きな手を握って、桜の木の下を駆け抜けた瞬間から。
彼が想いを寄せる人には到底及ばないけれど、わたしの行動で彼が少しでも救われたなんて、これほど嬉しいことはありません。

 

嬉しさを噛み締めたのちチラリと彼に目をやると、傘をわたしの方へかなり傾けていて、左肩がずぶ濡れになっていた。
驚いて「肩ずぶ濡れじゃん!なんで遠慮してるの、わたしはいいからそれ以上濡れないように傘さして」と傘を右手で持つ。どうりでわたしのスニーカーが濡れないわけだ。

それでも彼はわたしに傘を傾け、微笑む。

「知ってます? 相合傘って、雨で濡れてるほうが惚れてるんですよ」

 

年下の‘‘絶滅危惧種’’に相合傘の中で自由を奪われたい

至るところで高身長黒髪爽やかイケメンを拝むことができたなら、わたしはこんな風に妄想に勤しむこともなかったでしょう。世の中に多く存在しているとしても、出会えなければそれは存在していないも同然。やはり、街に繰り出すことが一番の近道というわけか……。

っていうか、わたしだって年下の高身長黒髪爽やかイケメンに「イヤならイヤって言わなきゃダメですよ」なんて言われたい。言われたすぎる。なんなら「ダメですよ」だけでもいい。禁止されたい。自由を奪われたい。相合傘の中で「この人に人生変えられちゃうかもって思った」なんて言われてみたい。

なんて、こたつに入りながら妄想しているだけでは、‘‘絶滅危惧種’’までの道のりは長くなるばかりだろう。

画像元:http://girlydrop.com/landscape/250

 

 

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めくばせ

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東京でゆるゆると生きながら、ことばと生きている21歳。揺れるものとピアス、視線が好き。人生のテーマは‘‘愛’’。

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