• HOME
  • 妄想
  • 平凡な日常にときめきを。恋スル瞬間は突然に。

平凡な日常にときめきを。恋スル瞬間は突然に。

wink
妄想

起きてからの行動は、いつものルーティーン

 

ガタンゴトン、ガタンゴトン。

いつも通りの朝、いつもと変わらぬ景色、そしていつもと同じ電車に乗り今日も学校に向かう。満員電車に乗り、香水や人の汗の独特な匂いに耐える。「はあ…」思わずため息が漏れた。こんなつまらない毎日、いつまで続くんだろうか。やっぱり東京に出て、歌手を目指したいと親に伝えるべきだったな。後悔の渦に飲み込まれる。

「選んだ道は本当にこっちでよかったのか…。後悔してももう遅い。1」と自分に言い聞かせ、またいつもの日常を消費していく。昔から、そうだった。周りの人の視線や世間体を人一倍気にして空気を読む。なるべく目立たないようにと生きてきた。幸い、人よりも頭の回転は早かったおかげで高校受験も苦労せずに入学できた。しかし、本当はずっと歌うことが好きで、「いつかテレビで見るアーティストのように大きな舞台で歌ってみたい」と心の中では願っていたのだ。

そのせいで高校に入ってからは、めっきり勉強をすることもなく先輩や他校の不良集団たちと毎日のように遊び呆けていた。悪目立ちはしたくなかったので、授業はちゃんと出席してなるべく先生の視界に入らぬよう息を潜め顔を伏せる。そんな私を知ってかしらずか、先生方は次第に私の名を口にすることは減っていった。高校は中学までの義務教育と違って自分次第な部分があったので救われた。

もうそろそろ耳が痛い。自分の好きなように生きる、って難しい。

成績はみるみる落ち、ついにはスポーツの推薦枠で入学したゴリゴリの運動部と肩を並べる点数にまでなってしまった。帰宅部と運動部の成績が一緒というのはなんとも滑稽である。私は担任の先生に呼ばれた。「出席日数は足りているが、成績がこのままじゃ国公立の大学はおろか私立も難しいぞ…」高校二年生になったばかりの私にもう「大学受験」という難題を出してくるのか。進学校は実に恐ろしい場所だと思った。

「大学行く気ないので…」
ポツリと呟く私の一言に先生は顔色を変え驚いたように、そしてどこか焦っているように話す。
「うちの学校の生徒の99.9パーセントは大学への進学を望んでるんだ。それに高学歴な大学受験者もたくさんいる。それなのにお前が平均点下げてどうする。士気が下がるだろうが。大学には行っといたほうがいい。」

進路の話を持ちだされる度、耳が痛い。申し訳なさはあったものの「どうせ、学校や自分自身のイメージが落ちることが嫌なだけじゃん」という反骨精神も生まれた。先生との面談が終わり教室を出る。そばにあったゴミ箱をチョンっと蹴った。

「物に当たるのはよくないないよ?」
不意に声をかけられたせいで、体が上下に小刻みに動く。振り返ると同じクラスの人気者の彼が首を傾げて廊下の壁沿いに立っていた。常に周りに人が集まる彼は控えめに行っても、太陽みたいな人だった。もちろん学校でもファンクラブができるほどモテる。

そんな人が、正反対の影のような私に話しかけてきたものだからなんて返していいかわからなくて無言のまま立ち尽くした。「あれ、聞こえなかった?それとも嫌われたかな…?」今度は困ったようにはにかみながら、右手で後ろ髪を掻いた。「あ、いや。いちいち絵になるなと思ってつい見とれてしまいました…」心の底から思った言葉を口に出したのはいつぶりだろうか。気がついたら声に出していた。

「あ、やばい」と思った時にはもう遅い。引かれてしまう前に早く訂正しなければと彼の方を向きなおすと、驚いたような顔をした後、少し照れたように笑った。放課後の夕日のせいなのだろうか、眩しくて思わず目が眩む。「悩みがあるなら、俺でよければ聞くよ。関係ない人に話すほうが気楽だったりするし。少なくともゴミ箱よりは頼りになると思うけど…。」と太陽の優しい声が、廊下に響いた。

その瞬間、ギュウギュウに閉じ込めていた栓が抜け、感情という濁流が一気に押し寄せる。感情は、涙と嗚咽と鈍い声に変わり気づけば泣きじゃくる子供のようになっていた。彼は「よしよし。誰にも言えなくて辛かったね。」と赤ん坊をあやすように頭を撫で続けてくれた。

ルーティーンにはない、特別なこと。

どれくらい時間が経ったのだろうか。

気がつけば窓の外は真っ暗で学校の中の生徒はほとんどいなくなっていた。職員室から出てきた先生は驚いた様子で話しかけてきたが、彼のフォローと愛嬌の良さで事無きを得た。

これ以上独り占めしてしまっては、学校中の女の子からどんな反感を受けるかわからない。涙も枯れ、落ち着きを取り戻した私は名残惜しさを振り払い「ありがとう、すっきりした。もう大丈夫だと思う」と言ってその場を離れようとした。

そんな気持ちを知ってか知らずか「少しは心が軽くなってくれたならよかった。いつも切羽詰まった表情してるから、これでも心配してたんだよね…」とさらに優しさの追い打ちをかけてくる。

さっきとは違う照れ臭いけど心地いい感情が押し寄せ、「ドキン」と恋に落ちる音がした。
その日から私のなんてことない日常は「特別な毎日」に変わった。

恋セヨ乙女、自分のために。

恋は、つまらなかった日常に色をつけてくれるから素敵だ。女の子が恋をして、もっと可愛くなろうと努力する姿がとても好きだ。可愛い女の子が増えたら、世界がもうちょっとだけ幸せに包まれると思ってる。恋セヨ乙女。

ゆるみな。

25,212 views

22歳。フリーランスのビアクリエイター/ライター・編集/グラビアアイドル。言葉とビールと料理とバスケと猫が好きです。生まれ故郷の秋田のフルーツでビールを造っ...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧